上岡敏之が語るワーグナーの魅力 |
【ヴッパータール交響楽団プレイベント】
8月4日 18:30~ アクロス福岡 円形ホールにて。
指揮者:上岡敏之
音楽評論家:小味渕彦之(インタビュアー)
10月15日にある、オール・ワーグナー(指環より抜粋、他)の管弦楽のみのコンサートに先立ち、指揮者の上岡氏による講演会が、無料にて(先着100名)行われました。
<演奏会での予定プログラム>
序曲「ファウスト」
ジークフリート牧歌
楽劇「ニーベルングの指環」ハイライト
「ラインの黄金」より“ワルハラ城への神々の入場”
「ワルキューレ」より“ワルキューレの騎行”
“ヴォータンの別れと魔の炎の音楽”
「ジークフリート」より“森のささやき”
「神々の黄昏」より“ジークフリートのラインへの旅”
“ジークフリートの死と葬送行進曲”
まずアクロス福岡の主催者挨拶から始まりましたが、驚いたことに、アクロス福岡で、オール・ワーグナーのコンサートを開くのは初めてだろう?との事。アクロスが出来て、15、16年ほどでしょうか。でもびっくりです。
東京などでは、オペラ全幕、演奏会形式などを含めて、年に何度もあっているというのに!もともとピアノ曲からクラシック音楽を聴き出した私も、ワーグナーの音楽はまだぜんぜんよくは知りませんが^^;
ですが今日集まった方は、ワーグナーの音楽が好きな方々、興味がある方々でしょうか、皆さん熱心に聞き入っていらっしゃいました。
さて、人生の中で、日本よりもドイツに住んでいる期間が長いという上岡氏は現在、ドイツの西部(フランスの国境近く)のザールブリュッケンと、もう少し中部よりのヴッパータールという都市、二箇所にお住まいであるとの事。
東京芸大卒業後に、ハンブルク音大に留学し、大学に学生としての籍を置いたまま、コレペティトールとして、歌劇場でのキャリアをスタートさせた上岡氏は、ピアノがとても得意でいらして、いくつかの曲のテーマをピアノで弾いたりしながら、色々と説明をされました。話の流れで出てきた、トリスタン和音のあの前奏曲の部分も弾いてくれましたが、やはりあのなかなか解決しない和声進行は、何とも言えない魅力があって、ピアノで聴いてもいいです!それから、ワルキューレの騎行のテーマも弾いてくれましたが、ワーグナーの音楽は、ワーグナーが生まれ育ったザクセン州(ライプツィヒやドレスデン)の言葉のなまりと、非常に関係しているとの事で、リズムの揺れや、音の跳躍の仕方などが、そのドイツ語の言葉のなまりと関連しているとの事。面白いですね。
ワーグナーは好きですか?とのご質問には、少し苦笑いで、ワーグナーは人物そのものが好きになれなかったし、得意ではない、と。理解するのには時間がかかったとおっしゃいました。ワーグナーはまだ全部は振っていないとの事ですが、長いからあまりしたくないとか(笑)。全幕ものの時に、幕間の休憩で、オケは休むが、指揮者はテンションが下がるから休めないとか、おっしゃってました。
でも、ワーグナーの音楽は、音楽語法でいう、「禁則事項」をたくさん使用しているからこそ、魅力的でもあると。
また、ゲルマン神話であるニーベルングの指環は、古典ドイツ語で歌われるので、普通に現在のドイツ人が話す会話の言葉と違うので、難しくて、特に若いドイツ人には理解が難しいため、ドイツ国内でも、現在のドイツ語に置き換えたドイツ語字幕が付く場合があるそうです。日本語でも、私など、例えば夏目漱石とかの文学小説を読むのも、文語体になっている為、さらさら読めず難しく感じますがそんな感じなのでしょうか?
しかし、今回のように、管弦楽だけの抜粋のコンサートは、ドイツなどでは無いそうです。ヨーロッパでは各都市に、歌劇場があるので、オペラも頻繁に行われ、気軽に、また安く、オペラが楽しめるので、本当に羨ましい環境です。
それにワーグナーのオペラ、楽劇は、言葉が非常に大切なので、オケだけでは、表現できない、とも。また、バイロイトのお話も少ししかけられたのですが、時間がありませんでした。
それから、オペラの演出、ドイツでの、読み替え(現代演出)についてのご意見も。
その他にも、上岡氏がピアノを弾きながら、色々と説明をされ、一時間半の予定を過ぎて、聴衆からの質問にも、いくつか答えて下さり、充実した講演会は終わりました。時間がぜんぜん短いなと思ってしまいましたが、無料でこのようなレクチャーが聞けるなんて感謝です。とても興味深く、面白かった。
私は、昨年ドレスデンで、「さまよえるオランダ人」のオペラを観たのが初のオペラ体験でしたが、その他のワーグナーの作品もみな長大で、クラシカジャパンで放送されたラインの黄金、ワルキューレ、トリスタンなどの映像は録画していすが、まだ観るに至っておりません。管弦楽曲集や、トリスタンのCDを時々聴く程度です。。ですが、その音楽自体はとても好きです。歌手や演出の事に至っては全く無知で分かりませんが、まずは、10月のコンサートを楽しみたいと思います☆