リスト 交響詩『オルフェウス』 |
ピアノ曲以外で最近お気に入りのリストの、交響詩『オルフェウス』を
Digital Concert Hall でも聴きました。10分あまりの短い曲だけど、何て感動的で美しい曲なのだろう!と思います。
この曲は、グルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』を、1854年にヴァイマル(ワイマール)で指揮をしたリストが、その折に序曲として作曲して初演したそうです。
福田弥氏のリスト本の中での作品解説の中の、リストの言葉を引用します。
「過去と同様に今日においても、人間性自体には、残忍、野蛮、肉欲という本能が認められますが、それを和らげ、穏やかにし、気高くすることが、芸術の使命です。過去と同様に今日においても、オルフェウス、すなわち芸術は、メロディーと和音が織り成す波長を発していなければなりません。それは、互いに傷つけあい、個人の心と社会の内部で血を流し合うような対立するものに対して、柔らかく抗し難い光のように響きます。オルフェウスは、エウリディーチェのために泣きました。彼女は、悪と不幸によって無と帰された理想の象徴です。・・・・・・彼は彼女を地上に連れてくることはできませんでした!われわれが、二度と野蛮な時代を目の当たりにすることがありませんように!」
リストの交響詩は、人類社会に対する、彼なりの理想の提示であり、願いの表れである。人類の救済をテーマにしているという意味で、リストの音楽は、彼自身も述べているように「本質的に宗教的」なのである。
竪琴の名手オルフェウスは「芸術」の象徴であり、彼の奏でる音楽が黄泉の国の魔物たちを諌めたように、この曲は「柔らかなエネルギー、・・・・・・天国の風のような甘い波動」となって世界と全宇宙とを包み込むのです。竪琴を思わせるハープの響きが柔らかい気分を生み出しており、その穏やかな性格は作品全体を通じて変わることはない。【福田弥氏の解説より】
2010年5月のベルリンフィル定期(デヴィッド・ロバートソン指揮)で、この曲が演奏されています。この時の演奏は、指揮者も奏者もみな、気持ち良く音楽を愛おしんで演奏しているのが伝わってきました。
短い曲なので、何度も何度も聴きましたが、リストがこの曲に込めた思いが感じられるように思います。
グルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』にも興味が湧いてきましたが、今度の日曜日、東京の文京シビックホールにて、鈴木優人氏指揮によるこのような↓公演があるのです!私は行けないのがとても残念ですが、またそのうちに機会を見つけたいと思います。
http://bunkyocivichall.jp/play_detail?id=95