クリスチャン・ツィメルマン/ピアノリサイタル |
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109
(休憩15分)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110
(休憩15分)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 op.111
今回の日本公演は、9月に発症したというツィメルマン氏の腰痛のために、福岡公演より前に予定されていた各地の公演が先に延期されたため、この福岡がツアーの初日となりました。彼の福岡での演奏会は、2009年以来の4年ぶりになります。大好きなベートーヴェンの後期ソナタということもあり、楽しみに迎えました。
まず、プログラムにも書かれてあったのですが、演奏の直前にツィメルマン氏の代弁という事で、場内アナウンス(以前誰かが彼の演奏会を録音~ネット公開したという事件、訴訟問題にまで発展したとの説明と注意喚起)があったので、ちょっと緊張感漂う始まりでありました。
舞台に登場されたツィメルマン氏は、にこやかな笑顔で、腰痛の後遺症も感じられず、いつもの通りエレガントな雰囲気で、ホッとしました。ただ、左手だけにサポーター(指の無い手袋のようなもの)をされていたのがちょっと気になりましたが。これはいつもの事なのでしょうか?
演奏はやっぱり、ツィメルマンならではの本当に美しく気持ちのこもったもので、ベートーヴェンへの思いや、音楽に向かう誠実さが伝わるものでした。繊細なタッチと美しい音色に包まれた貴重な時間、こちらも良い緊張感で背筋を正す思いに。
31番ではドキッとする場面もありましたが、32番は圧巻の素晴らしさ!32番は前回の来福公演でも弾いてくれましたが、今回さらに感動。
私は至近距離の席だったので、演奏と共に彼のハミングまでずっと聴こえておりました。ベートーヴェンが40代半ばで作曲した今回の作品は、その時のベートーヴェンの苦悩や、またそこからの希望、フーガからは複雑な心情を感じさせるものがあり、デリケートなツィメルマン氏がこれらの曲に、心から対峙して伝えてくれたように思いました。
福岡に来てくれたのは、2006年、2009年に続いて3回目。毎回魂のこもった演奏を聴かせてくれて感謝です。3階席はクローズでしたが、会場はほぼ満席に近い感じでありました。またぜひ来て頂きたいです。