昨年の
トッパンホールで試写会があった時には、福岡では無いと思っていた「ピアノマニア」。先月、鑑賞された galahadさんに、福岡でも上演されると教えて頂き、昨夜、KBCシネマで観てきました。パンフレットの内容もなかなか面白いです。
4月4日は、特別に映画の解説などの公開記念トークイベントというのが、昼間の上演で行われており、本当はそれに行きたかったのですが、仕事で無理なので、夜の通常の上演に行きました。しかし、昼間のトークイベントで使われた解説のプリントのコピーもチケットと一緒に渡されました。
これらを見て、これは是非、解説トークを聞いてみたかったところです!(残念)
調律師のクニュップファー氏の仕事ぶりに、あらためて感銘を受けました。調律師は単なる技術者ではなく、アーティストであると監督が言っていますが、彼は本当に研究熱心で、それを楽しんでいるかのようでもあります。ああいう姿勢は見習いたい。
特別な作品であるバッハ「フーガの技法」を録音する為に、最大限に、極限的な調律、調整をしているので、とても繊細で、音がすぐに変わってしまう。あれだけ高度な要求をされ、試行錯誤を繰り返し、普通ならば神経をやられてしまいそうな気もします。しかし、クニュップファー氏は、実際にやっている作業は細かいのだけれど、そんなピリピリした神経質そうな人物ではなく、持ち前の前向きな性格と、豊かな好奇心が上手く作用して、大変な仕事も元気にやっていっているように見えます。見ていて応援したくなる人です。
それから、エマールと録音技師とのやりとりで、エマールが 「調整しすぎるのは、危険だな」 と言っていたのが、これは少し皮肉のつもりだったのか?・・・
パンフレットにも書かれていますが、「フーガの技法」は、フーガは4声(一部は3声)、カノンは2声で書かれ、一部を除き、バッハの時代に用いられていた鍵盤楽器1台で、ほぼ演奏できるように作曲されてはいるものの、通常の鍵盤楽器用の譜面の2段譜ではなく、各声部が1段ずつ独立したオープンスコアで書かれていた。発表された当初は、全く注目されていなかったが、1838年に、カール・ツェルニーがピアノ用に校訂した譜面が出版され(← この事は、知りませんでした!ツェルニー、こんな功績もあったのですね)、さらに19世紀後半以降になると、名ピアニストらが演奏に取り組み始め、ようやく脚光を浴びるようになっていった。
そして楽器の指定が無い事や、最後のフーガが未完に終わっている事、楽曲の内容からしても、複雑なミステリーをはらんだ作品。
エマールが30年ほども前に、旧東ドイツで、この曲のバッハ直筆のファクシミリ譜と、初版のリプリントを手に入れてから、長年あたためてきた楽曲。以前からエマールは、バッハには何度でも挑戦し続けなければならないと語っていました。
クニュップファー氏、本当にお疲れ様でした!自分が調律したピアノを、エマールがどう思うか、意見を聞くのはいつもドキドキするのだろうなぁ。最後はエマールに 「私は、この音を夢見ていたんだ」 と言われたと、最高の誉め言葉をもらった事を思い出しながら、喜びを噛み締めている運転シーンも印象的でした。
映画の中での、ウィーンを中心としたヨーロッパの街並みがとても美しかったです。また断片的ではありますが、映画の中で鳴り響くエマールの演奏、特に、カーターがエマールの為に作曲したという曲「2つのダイヴァージョン」、かな?そして「ナイト・ファンタジー」(カーターの曲、エマールが弾くと、なんであんなにかっこいいいんだろう!)、それから「フーガの技法」が、やっぱり良かったです。